逸失利益の計算ができるようになるためには

だれだって面倒な計算は苦手ですよね。

ですが、加害者に損害賠償請求をするためには、きちんと数字を出して計算をしなければなりません。

そこで今回は、逸失利益の計算ができるように、計算式や計算に必要な数字の選び方を説明していきます。

後半では「赤い本」基準を使った逸失利益の計算もするので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

事故さえなければ故人が手にしていたはずの収入=逸失利益

死亡事故によって被害者が亡くなると、故人が稼ぐはずだった給料はもらえなくなりますよね。

人が一生で稼ぐお金の総額は小さなものではありません。

損害賠償請求は、事故による損失を加害者に補償してもらうためのものですから、「本来なら遺族が生活するために必要な、故人の将来的な収入」を逸失利益という名前で相手に請求できるようになっています。

ただ、逸失利益は「故人の年収×退職するまでの年数」という単純な計算では金額が出せないのが難しいところなのです

逸失利益の計算式、計算に必要な項目の説明

逸失利益の計算式は、

「基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対するライプニッツ係数」

です。

基礎収入

基礎収入は、被害者の実際の年収か、厚生労働省が発表している賃金センサスの平均年収を使います。

平均年収<故人の実際の年収であれば簡単ですが、故人が専業主婦であったり、無職であったり、学生であったりする場合は年収が計算できませんよね。

また、平均年収より実際の年収のほうが低いなんてことも考えられます。

そういうときは平均年収を利用します。

ちなみに、若い人はあまり年収が高くないので、被害者が30歳未満の場合は平均年収を採用することが多いです。

生活費控除率

損害賠償請求は、「事故によって受けた損失を相手に補償してもらう」ことなので、事故があってもなくても変わらず必要な出費である生活費はわけて考える必要があります。

生活費控除率は、赤い本基準だと以下のようになっています。

  • 故人が一家の大黒柱で、1人を扶養している→40%
  • 大黒柱で、2人以上を扶養している→30%
  • 被害者が女性(主婦や独身も含みます)→30%
  • 被害者が男性で独身→50%

パーセンテージが違うのは、独身なら趣味や遊びでお金を自由に使うだろう、旦那さんが亡くなって奥さんと子供が残されるケースはより手厚く保護すべき、などの考えがあるからです。

就労可能年数から判断するライプニッツ係数

逸失利益の計算では、「平均的に67歳まで仕事ができる」と考えます。

ここで問題となるのが、「将来もらうはずのお金をいまもらうことに対する、価値の補正」です。

例えば今年もらうはずだった年収を銀行に預けると、金利がつきますよね。

金利を差し引かずに請求すると、保険会社は「故人の年収+金利ぶん」まで支払うことになってしまいます。それを避けるために、中間金利を引かなければならないのです。

ただ、金利を細かく計算しようとすると、「今年ぶんの年収と利息はいくら」「来年ぶんの年収と、今年+来年ぶんに対する利息はいくら」と年数のぶん何十回と計算する必要があって大変です。

そこで、中間利息の計算結果をまとめた、ライプニッツ係数表なるものが用意されています。

就労可能年数がわかれば、あとは表から数字を選ぶだけで良いので計算がとても楽になるのです。

数字をいれて計算してみよう

説明だけだとどうしてもわかりづらいので、実際に数字を入れてみましょう。

年収600万円、一家の大黒柱である42歳の男性が亡くなったとします。

残されたのは専業主婦の奥さんと17歳になる長女が1人です。

平成25年の賃金センサスによると、40歳から44歳までの男性の平均年収はおよそ530万円。

実際の年収のほうが高いので、「基礎収入は600万円」になります。

故人は家計を支えており、奥さんと子供の2人を扶養しているため、「生活費控除率は30%」です。

就労可能年数は、67歳-42歳=25年ですから、ライプニッツ係数表によると「ライプニッツ係数は14.094」となります。

というわけで、数字を計算式にあてはめてみましょう。

基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対するライプニッツ係数=

600万円×(1-30%)×14.094=5919万4800円

となりました。

このほかに、精神的な慰謝料や葬儀費用などを足すと、「赤い本基準=裁判基準」の損害賠償請求の総額がわかるわけです。

自賠責保険の支払い限度額が3000万円ですから、とても大きな金額ですよね。

ライプニッツ係数の数字は変わるかもしれない

ライプニッツ係数は、民法第404条で決められている「年利5%」で数字を計算しています。

ただ、年利に関しては「この低金利の時代に、5%も遺族の逸失利益から差し引くのはどうなの?」という議論があり、金利を3%に下げて、しかも変動金利にしよう、という法律の改正案が2015年3月31日に国会に提出されているので、改正案が通れば数字は大きく変わります。

請求できる金額も大きくなるので、ニュースなどに注目しておくと良いでしょう。