加害者に請求する損害賠償の分類の一つ、「精神的損害」とは

財産的損害の分類である積極的損害、消極的損害について説明してきました。

「事故によって被害者遺族が支払う費用|積極的損害」でもいった通り、死亡事故の損害賠償請求では財産や損失の補てん以外に、「被害者や被害者遺族が負った精神的なダメージに対する賠償金」である精神的損害の請求も認められています。

ですが、目には見えない心の傷に対する慰謝料なんて、どうやって決めたら良いのかわかりませんよね。

できるだけ高額に何千万円、何億円と請求したいところですが、被害者遺族のだれもが数億円単位の請求をすると、日本じゅうの保険会社が倒産してしまいます。

損害賠償請求は、あくまでも受けた損失の補てんです。

法外な請求にならないよう、公平に請求できるように、さまざまな決まりごとがつくられています。

「交通死亡事故の慰謝料相場と算定方法」において自賠責基準や裁判基準における死亡慰謝料の相場は軽く説明していますが、今回はより詳しく「精神的損害とはなんぞや」ということについて知っていきましょう。

慰謝料請求権の根拠

そもそも、被害者本人や遺族が受けたショックに対する慰謝料を請求する根拠はどこにあるのでしょうか。

財産的な意味での損害賠償請求権は、民法第709条で認められています。

おなじように、慰謝料請求権については民法第710条に根拠があります。

民法第710条では、「損害賠償請求をしなければならない人は、財産以外の損失にも責任を取りましょう」と決められているのです。

財産以外、つまり目に見えるものや計算ができるものではなく、被害者や遺族の心という目に見えないものを傷つけた、という事実に対して加害者は賠償をしなければならないわけです。

議論はいろいろありますが、慰謝料請求権も損害賠償請求権と同じように「被害者本人が手に入れた賠償権を、相続人が相続する」と考えられています。

とはいえ、金額が決まらないと具体的な請求の話はできませんよね。

「精神的に傷ついた慰謝料として100億円払え!」なんて請求をしても支払いは不可能なのです。

そこで、精神的損害である死亡慰謝料は、自賠責や裁判基準(赤い本基準)でだいたいの基準額を設定しています。 

お金に換算しづらい精神的損害の金額は、自賠責基準、裁判基準で計算する

死亡慰謝料の金額は、極端なことをいうといくらでも請求することが可能です。

ただ、払えといっても相手はない袖は振れませんし、むちゃくちゃな請求をすると「そんなに払えない!」と反発してきて交渉が難航してしまうので、落としどころとしておおまかな基準が設けられているわけです。

死亡慰謝料の金額については「交通死亡事故の慰謝料相場と算定方法」でも解説していますが、おさらいをしていきましょう。

自賠責基準の死亡慰謝料

自賠責基準では、被害者本人に対する慰謝料額が「350万円」です。

そのうえで、故人がだれかを扶養していた場合は「200万円」の追加。故人の親御さんや奥さん、旦那さん、子供の人数に応じて「550万円~750万円」が追加される、という寸法になっています。

また、民法の第711条では、故人本人から請求権者が相続する慰謝料請求権以外にも、「近親者固有の慰謝料請求」を認めています。

内縁関係の人など、とくべつ関係が深い人が受ける精神的なダメージの補てんも別途請求できるのです。

裁判基準の死亡慰謝料

裁判基準の死亡慰謝料額は、とてもシンプルです。

故人が大黒柱だった場合は2800万円。

故人が一家の母親や配偶者だった場合は2400万円。

それ以外の場合は2000万円から2200万円くらい。

というのが基準とされています。

財産的損害の請求とはべつに、損害賠償請求ではこれらの数字を参考にして「精神的なダメージに対する慰謝料」を請求するのです。

数々の裁判の結果から算出した金額なので、裁判をすれば高確率で請求が認められます。

裁判基準で慰謝料請求をするとき、「近親者固有の慰謝料請求」を上乗せできるのか

自賠責に比べると、裁判基準の死亡慰謝料は単純明快です。

どうしてかというと、「裁判をした結果、認められる死亡慰謝料の総額がだいたいこれくらい」という基準だからです。

自賠責基準なら個別に請求するはずの近親者固有の慰謝料についても、最初から含めた金額で考えているので、裁判基準で慰謝料請求をする場合、近親者固有の慰謝料を上乗せすることはできません。 

精神的損害=慰謝料は、相手の事件の悪質性や状況で増額することもある

 じつは、死亡慰謝料は死亡事故の内容や加害者の過失の度合いによっては増額できます。

具体的な事例は「死亡慰謝料が増額するケースとその要因」で紹介していますが、ようするに相手が反省していなかったり、法律違反をしているとより高額な請求も可能になるのです。

ただ、損害賠償請求で大切なのは、必ずしも最後まで加害者側と法廷で争うこととは限りません。

妥当な金額での賠償金をできるだけスムーズに勝ち取るほうが、遺族の負担が軽くなるともいえるのです。

慰謝料の根拠と基準を使って、取れる金額を取りましょう。