積極的損害と対をなす「消極的損害」

「損害賠償金がどのくらいもらえるのか知りたい!」と思ったとき、おおざっぱでも良いので自分で賠償金の計算ができたほうが良いと思いませんか?

死亡事故が起きたら、すぐに弁護士に頼んで一切自分で交渉をしない、弁護士がいう通りの請求で構わない、と思っていても、ある程度のことは知っておかないといけません。

どうしてかというと、弁護士とは「依頼者であるあなたの希望に従って、より現実的な提案や相手との交渉を行う存在」だからです。

「なにもかも弁護士にまかせておくだけじゃだめなの!?」と驚いてしまうかもしれませんが、賠償金がいくら欲しい、どういう解決を目指したいといった依頼者の考えがないということは、目的地を決めずに船に乗って大海原に飛び出すようなもの。

なんとなく良い感じの結果を目指すことはできますが、しっかりきっちり細かいところまで賠償金請求を行うのは難しいのです。

損害賠償金がいくらくらいになるのか把握するために一番効率的なのは、いくつかある損害賠償の内訳のなかで、最も高額な「消極的損害」について知ることです。

というわけで、今回は財産的損害の一つ、積極的損害と対なす「消極的損害」について説明していきます。

死亡事故の場合、消極的損害=死亡逸失利益!

積極的損害の説明では、治療費や葬儀費用などさまざまな分類がありましたよね。

消極的損害にも、分類があります。

分類といっても2つです。

仕事を休んだぶん入ってこなくなる給料を指す「休業損害」と、事故にあわなければ故人が働いて稼いでいるはずだった将来的な利益(年収)の損失を指す「逸失利益」です。

ただ、死亡事故の場合、「事故によるけがの治療で仕事を休んだ日数×1日あたりのその人の稼ぎ」を請求することはありません。

逸失利益も、「事故によって後遺障害が残ってしまい、以前のように働けなくなってしまったことの補てん」である「後遺障害に対する逸失利益」は考えなくて良いでしょう。

実質的に、「事故で亡くなり、今後働いて手にするはずだった将来的な給料の総額」である死亡逸失利益=消極的損害だと思って構わないのです。

そして、死亡事故における逸失利益は、以下のように計算します。

  • 死亡逸失利益=故人の年収×生活費の割合×ライプニッツ係数

詳しい説明は「逸失利益の計算式や計算に必要な数字の選び方」でするとして、ここでは簡単に逸失利益を計算するために必要な用語の意味を抑えましょう。

逸失利益を考えるにあたって必要な「年収」「生活費控除率」「ライプニッツ係数」

逸失利益の計算では、基礎年収や生活費控除率、ライプニッツ係数(またはホフマン係数)といった、普段聞くことのないことばをつかいます。

小難しく聞こえますが、意味さえわかれば計算そのものはそんなに難しくありません。

基礎収入

年収のことです。

会社員なら源泉徴収票、個人事業主なら確定申告書などを使って金額を決めますが、賃金センサスといって厚生労働省が発表している日本全体の平均年収、年齢や性別ごとの平均年収を使う場合もあります。

生活費控除率

故人が稼いでいたはずの将来的な給料からは、家賃などの生活費も出ていたはずですよね。

生活費は「事故があってもなくても必要な支払い」ですから、加害者への損害賠償請求に含めることができません。

故人が一家の大黒柱であった、独身であったなど家庭内の立場によって、「生活費として○%は使っていただろう」という値が決められています。これが生活費控除率です。

ライプニッツ係数

「交通死亡事故が起きたら遺族はいくらもえるのか?」でも触れていますし、ちょっと難しいのでさくっと飛ばしてしまいましょう。

簡単にいうと、「将来的に稼ぐはずだったお金をいまもらって銀行に預けたら、本来収入を手にするはずだったタイミングで利息がついているはずだよね。この利息ぶんは抜いて考えよう」という計算をするために必要な数字です。

ライプニッツ係数ではなく、ホフマン係数というものを使う場合もあります。

もし、故人が無職だった場合はどうなるの?

消極的損害である死亡逸失利益は、「年収×事故がなければ働いていたはずの年数」の金額を相手に請求するわけですから、とても高額です。

年収300万円の人が亡くなったとして、10年ぶんでも単純計算で3000万円ですよね。

もちろん、実際には生活費などを差し引きするぶん少なくなりますが、20年ぶん、30年ぶんと計算をしていけば1億円近くいってしまうこともあるのです。

だからこそ、逸失利益がわかっていると、おおざっぱに損害賠償金の総額を推測できるようになります。

ちなみに、故人が事故のとき無職だった場合は、学歴や職歴、年齢などから「今後就職してお金を稼ぐ可能性がある」と判断できるなら、賃金センサスの平均年収を使って逸失利益を計算することができます。

なので、専業主婦や無職であっても逸失利益はひとごとではないのです。

被害者が若くて高給取りであるほど金額が大きくなるのが逸失利益です。

死亡事故の損害賠償請求ではとても大切な請求の名目なので、しっかり請求していきましょう。