加害者に死亡事故の損害賠償請求をできるのは、故人の相続人

死亡事故の加害者、もしくは相手の任意保険会社を相手に損害賠償請求をするとき、「そういえば、だれが請求を行うんだろう」と気になる方はいませんか?

加害者に対して損害賠償請求をする、示談でだめなら調停へ、調停でだめなら裁判へ、できれば弁護士に相談しましょうというのは想像しやすいと思いますが、実際のところだれが先頭にたって手続きを行うことになるのか、ちょっとイメージがわかないという人もいますよね。

例えば36歳、働き盛りの夫婦のお父さんが死亡事故で亡くなってしまい、奥さんと7歳の子供、故人のご両親ときょうだい(姉、弟)が残されてしまった場合、だれが請求を行えば良いのでしょうか。

答えをいってしまうと、「亡くなった故人の相続人なら、だれもが損害賠償請求をすることができる」というふうになるのですが、せっかくですからもう少し詳しく相続人と損害賠償請求の関係について触れていきましょう。

「損害賠償請求をする権利」は基本的に故人のもの

民法において、他人からなんらかの不利益や被害を受けた人は、「私はこの人からこんなことをされて損害を受けたので、損害賠償請求をするよ」ということができる権利を保証されています。

相手に損害賠償請求する権利をもつのは、被害を受けた本人ですから、死亡事故の場合、「加害者に対して、死亡事故の損害賠償請求をする権利をもっているのは故人その人」ということになります。

ですが、故人は当然亡くなっていますよね。

葬儀の準備中に棺からのっそり起き上がって、「おいおいちょっと葬儀は待ってくれ。そのまえに相手に損害賠償請求をしておこう」なんていいだすことはありません。

では、どうするのか。

人が亡くなったあと、その人がもっていた財産、資産はすべて相続人に相続されます。

被害者本人が事故にあったことで手に入れた「加害者への損害賠償請求権」も、例外ではないのです。

現金や不動産と違って、権利はすぐに相続される

相続では、いろいろな権利関係の問題もありますし、だれがどの資産をどれくらいの割合で相続するのか、税金はかかるのか、節税対策はできるのか、といったことを考えなければならないので、時間がかかります。

故人の銀行口座からお金を引き出すには、相続をしてから名義変更をしなければなりませんし、不動産だって相続を終えて名義変更をしてはじめて相続人の財産になるわけです。

ですが、損害賠償請求権はすぐに必要になるものですし、なにより目に見えるものではありません。なので、面倒な現金や不動産の相続とはちょっと違って、故人の死後すぐに相続人に権利が相続されることになります。

だからこそ、相続人は好きなタイミングで損害賠償請求をできるのです。

故人の相続人にあたる人とは?

「故人の相続人ってだれなの?」という話をしていきましょう。

相続人をものすごく簡単に説明すると、「家族」です。

ただ、単純に家族というくくりで考えると、相続人の数がものすごく増えてしまいますよね。

人数が増えれば財産の分割も大変になりますし、故人と生活していた奥さんを放っておいて、十数年も会っていない故人のきょうだいに遺産を渡さなければならないのか、なんて問題も生まれます。

「相続人でないと慰謝料はもらえないのか」でも説明していますが、相続人として財産を相続する権利をもつ人には順位があり、主張できる遺産の基本的な割合が決められているのです。

なにがあっても必ず相続人としての権利をもつのが、配偶者、つまり故人の奥さんや旦那さんです。

そのあと、故人の子供。

子供がいない場合は孫、そのつぎが両親(両親がいないときは祖父母)。子供も両親もいないならきょうだい(きょうだいがいないときはその子供である甥っ子姪っ子)という順番です。

冒頭の例では、「故人の奥さん」と「7歳の子供」がいますよね。両親が健在でも、より高い順位の子供がいるので、相続人は「故人の奥さんと子供の2人だけ」になります。

 亡くなった故人から権利を相続して、加害者に損害賠償請求をすることができるのは、故人の奥さんと子供ということです。 

相続人が数人いる場合はどうなるの?

相続人が複数いる場合、「全員が損害賠償請求権をもつ」ことになります。

こまかくいうと、相続人それぞれに認められる相続分ごとに、「半分」「3分の1」といったふうに損害賠償請求権は分割されていますから、それぞれで損害賠償請求をするのはあまりにも大変です。

そこで、多くの場合損害賠償請求をするために一人代表を決め、その人がまとめて加害者に損害賠償請求権を行い、もらった賠償金を相続人で分割する、といった流れになります。

相続関係の知識は、損害賠償請求だけでなく遺産相続のときにも役立ちます。

損害賠償請求をできるのは相続人だけです。

死亡事故の賠償金は額がおおきいぶん、よろしくない人が寄ってくる可能性もありますから、相続人でない人が損害賠償請求についてなにかいってきても、なるべく話を聞かないようしましょう。

専門家でも当事者でもない第三者の意見は、トラブルのもとなのです。