弁護士費用は相手に請求できるのか

「裁判をしたら、負けたほうが勝ったほうの弁護士費用などもすべて払う!」と思っている方、いませんか?

死亡事故の場合、相手の運転のせいで身近な人の死という取り返しのつかない損害を受けています。

遺族は面倒な裁判の手続きに裁判費用を負担し、弁護士を頼まなくてはならないのだから、相手に弁護士費用をあとから負担してもらうのは当然! と考えてしまうこともありますよね。

しかし、基本的に裁判にかかった費用というのは自己負担でやりましょうというのが現在の制度になっています。

「相手のせいで弁護士を雇わなくちゃいけなくなったのに、賠償金とはべつに弁護士費用は請求できないの!?」

と考えた方、ご安心ください。

じつは死亡事故の場合、相手に対して民事訴訟を起こして勝訴すると、弁護士費用を別途請求することができるのです。

どうして請求できるのか、いくらくらいの金額を請求できるのかを説明していきます。

加害者の不法行為にもとづく損害賠償請求なら、弁護士費用を請求できる!

民事で起こす損害賠償請求の裁判をおおざっぱにわけると、

  • お互いの意見の食い違いから、一方が相手を訴えるパターン
  • 相手が悪いことをした結果損失を受けたので、相手に損害賠償を請求するパターン

があります。

このうち、前者の「お互いの意見の食い違いなど」で行う損害賠償請求の場合、相手はべつに法律を犯しているわけではありませんよね。

極端な話、知り合いや友人のあいだで起きたちょっとした揉めごとが大きくなってしまっただけなので、「料金の高い弁護士を頼まなくたって、請求も裁判も自分でできるでしょ!」と裁判所は考えるのです。

その点、「相手の不法行為による損害賠償請求」は、「相手のせいで遺族は裁判費用(起訴状のお金などなど)などを負担しなければならない。しかも疲れきっているのに複雑で時間のかかる裁判をするという負担まであるのだから、ある程度は弁護士費用を認めても良いよね」と考えてくれるのです。

実際、日弁連交通事故相談センターが発行している通称「赤い本」によると、

  • 東京地裁 平成12年7月28日の判決

被害にあった夫婦が日本語をうまく喋れなかったので、通常の示談や裁判よりも判決が出るまでに相当の努力が必要だった、という理由から60万円の弁護士費用の請求を認めました。

といった判例が紹介されています。

認められる請求額は、実費ではなく「賠償額の10%」

では、弁護士費用はいくら請求できるのかに進みましょう。

さきほど紹介した「赤い本」によると、「認容額の10%を弁護士費用として請求しても良い」ことになっています。

もうちょっと噛み砕いていうと、「実際に弁護士費用としていくらかかったのかに関係なく、裁判の判決として最終的に認められた損害賠償金額の10%を、弁護士費用として請求して良い」ということです。

例えば、「加害者に対して1億円の損害賠償請求をして、裁判の結果8000万円の請求が認められた」としましょう。

判決による損害賠償金額(認容額)は「8000万円」ですから、その10%である「800万円くらい」を弁護士費用として請求できる、というわけです。総額8800万円ですね。

ここで重要なのは、「実費額とは関係ない」ことです。

弁護士費用はほとんどが成功報酬なので、損害賠償金の額がとても高額になる死亡事故でも「弁護士費用だけで支払ってもらった賠償金がすべてなくなってしまう」といったことはまずありません。

しかし、かかった費用によってはかなりの実費負担をあなたがすることになってしまいます。

「裁判に勝てばあとで全額取り戻せるのだから」と無理をしてお金をつぎ込むのは避けましょう。

弁護士費用がどのくらい認められそうなのか、弁護士と相談してかけられる予算を考えておくことをおすすめします。

裁判になった場合は、「遅延損害金」も請求できる

弁護士費用ではないのですが、死亡事故で裁判を起こした場合、「裁判をして損害賠償金の支払いが遅くなればなるほど、その期間のぶんの遅延損害金を相手に請求できる」ようになっています。

人身事故でも死亡事故でも、一番良いのはスムーズに本人や遺族に対して賠償が行われることですよね。

ですが、加害者や保険会社が裁判をせざるを得ないような態度である場合、実際に被害者遺族に補償が行われるまで相当な時間がかかってしまいます。

裁判も弁護士費用も長期化すればするほど高額になるので、途中でお金がなくなって裁判がつづけられない。ますます経済的に困ってしまうなどのおそれがあるわけです。

本来すぐにでも行うべき賠償を加害者側の都合で遅らせた結果、遺族にあたらしく損害が生まれているわけですから、加害者はその責任をお金という形で賠償しましょう、と考えます。

弁護士費用や遅延損害金をきちんと請求すれば、裁判が長期化しても損失を取り返すことができます。

こまかい費目もきちんと請求して、できるだけ多くの損害賠償金を勝ち取りましょう。

ちなみに、示談や調停の場合、弁護士費用や遅延損害金は認められないので注意が必要です。