加害者なのに、弁護士に頼む人なんているの?

弁護士というと、「他人とトラブルになったとき、自分ではどうしようもないときの最終手段」というイメージがありませんか?

弁護士と日常的に交渉したり、話をしたりしているという人は多くないでしょう。

だからこそ「相手との交渉中に弁護士が出てくる」と驚きますよね。

とくに、死亡事故のように「相手が加害者で、相手に過失がある」場合、被害者遺族は弁護士を立ててくるなんて思ってもみませんから、怒るやら慌てるやら大変です。

しかし、死亡事故の加害者が弁護士を入れるといってきたとしても慌てる必要はありません。

なんのための弁護士なのかをきちんと確認したうえで、どう対応すべきか知っておけば良いだけなのです。

今回は、相手側が弁護士を立ててきた場合の対処法を紹介します。

「なんのための弁護士か」を確認してから対応を決めよう

「死亡事故を起こした加害者が、弁護士を立てる」というととても大変なことをしているように感じるかもしれませんが、最初に気にするべきなのは、「なんのための弁護士か」を確認することです。

交通事故の加害者が弁護士に依頼をする場合、必要に応じてだいたい3つのパターンにわけられます。

  1. 刑事裁判のために弁護士を雇った
  2. 民事の損害賠償請求のために弁護士を雇った
  3. 裁判になりそうなので、加害者が入っている保険会社の顧問弁護士が出てきた

あとで詳しく説明しますが、このうち①は遺族に関係ありません。

②と③でも状況によって必要な対応は変わってきますが、「慰謝料を払え! さもないと・・・」なんて不法行為でもしていない限り、どちらのケースも特別恐れる必要はないのです。

①刑事裁判のために弁護士を雇った

裁判をするとき、加害者もきちんと意見を主張したり、不当に扱われないようにしたりするために弁護士を雇うことができます。

刑事裁判のために雇われた弁護士の仕事は、ざっくりいえば「加害者の刑事処分をできるだけ軽くすること」です。

刑事裁判のために雇われた弁護士が交渉をする相手は検察や裁判官で、遺族ではありません。

「被害者参加制度」で裁判に参加するならともかく、弁護士も雇わず、ただ判決が出るのを待っていれば良いのです。

ただ、刑事裁判が終わったあと、引きつづき民事の請求も同じ弁護士に依頼する、というケースも考えられます。その場合は②の対応を参考にしてください。

②民事の損害賠償請求のために弁護士を雇った

加害者に請求する損害賠償は、多くの場合相手が加入している任意保険の会社と交渉して決めます。

ただ、人によっては保険会社の担当者に交渉をしてもらうのではなく、個人的に弁護士を雇って、「以後は保険会社ではなく弁護士と交渉してください」という対応を取る人もいます。

遺族としては一番やっかいなパターンです。

保険会社の担当者も海千山千のツワモノですが、弁護士となると交渉事のプロフェッショナルであり、法律の知識も豊富で、単純に話し合いをして勝てる相手ではないからです。

ただ、一つ安心してほしいのは、「相手が弁護士を雇ったからといって、必ずしも遺族が不当な扱いを受けるわけではない」ということです。

弁護士は交渉ごとのプロであり、冷静な第三者です。

感情を挟まずに交渉ができるぶん、示談が短時間で決まる、なんてことも考えられます。

もちろん1円でも損害賠償金を安くしたいから弁護士を雇う場合もありますが、逆に、遺族に適正な賠償をしたい、自分が交渉の窓口になることで遺族に負担をかけたくない、保険会社の担当者がでたらめな人で交渉が難航するので弁護士を入れる、なんてこともあるのです。

とはいえ、弁護士は雇い主である加害者の利益を少しでも大きくするためにあの手この手で交渉してきます。

不利な結果にならないよう、弁護士を雇って交渉を一任するのが一番楽な対処法です。

ただ、相手側の弁護士が出してきた条件や示談の内容に納得がいくなら、弁護士を立てずに合意してしまって構いません。

③裁判になりそうなので、加害者が入っている保険会社の顧問弁護士が出てきた

保険会社と民事で裁判する場合、裁判をする相手はこれまで交渉をしてきた保険会社の人ではなく、保険会社の顧問弁護士になります。

実際に交渉をする相手が変わりますから、遺族としては加害者が弁護士を雇ったようにみえるかもしれませんね。

ただ、加害者が直接雇ったわけではないので、②とは微妙に状況が違います。

保険会社が立ててくる弁護士は保険金を少しでも引き下げるためにいる存在ですから、弁護士を立てて対抗したほうが良いです。

「遺族にきちんとした賠償をするため」に弁護士を立てる保険会社はありません。もしそうした考えがあるなら、示談の時点で話が終わっているはずだからです。

相手弁護士と交渉するなら弁護士を

知識も気力も充実した弁護士を相手に、精神的に消耗している遺族が粘り強く交渉するのは難しいです。

弁護士が出てきたら絶対にこちらも弁護士を雇わなければならないというわけではありませんが、交渉が必要なら弁護士を頼むのがおすすめです。