交通事故の損害賠償請求で大切な「過失割合」とは

死亡事故が起きたあと、「相手のせいで亡くなったんだから、損失はすべて相手があがなうべき!」と思うのは至極当然のことです。

ただ、損害賠償請求で損をしないためには「あること」を考えなければならないとあなたは知っていますか?

「あること」とは、「過失総裁(過失割合)」と呼ばれる考えのことです。

ちょっと考えてみていただきたいのですが、一般的な交通事故の原因は、はたして加害者だけにあるものでしょうか。

完全に停車しているところにスピード超過で突っ込まれた、なんて場合を除けば、「確かに加害者も悪かったけど、被害者にも落ち度はあったよね」ということも考えられるはずです。

事故の過失が被害者と加害者のどちらにあるのかをきちんと考えなければ、極端な話、「じつは被害者が無謀な運転をしたせいで事故が起きたのに、不幸にも巻き込まれてしまった加害者が億単位の賠償金を支払う」ことになってしまいかねません。

被害にあっている遺族としては悔しい限りですが、「悲惨な事故の原因が、はたして加害者と被害者のどちらにあったのか」を考えるのはとても重要なことなのです。

損害賠償請求の金額は、過失割合で大きく左右される

死亡事故、と考えると被害が大きすぎますから、簡単に「Aという車とBという車が交通事故を起こし、お互いけがはないものの、車の修理に100万円かかった」というシチュエーションを例に、過失相殺と損害賠償請求の関係を考えてみましょう。

AさんとBさんが事故によって受けた損害は、それぞれ100万円ですよね。

AさんもBさんも、相手に対して「事故のせいで損をしたんだから、100万円の損害賠償請求を相手にするぞ」となるわけです。

もし事故が起きた原因がお互いに同じくらいあれば、つまり過失割合を考えなければ、お互いに100万円ずつ払えばきれいに痛み分けとなり、話は丸く収まります。

しかし実際には、事故の原因はAさんかBさんのどちらかにあるはずです。

例えば、「今回の事故が起きたのは、Aさんが直進してくるBさんの車に気づかず、無理やり右折をしたせいだ」としましょう。

ついでに、「Aさんが無理やり右折した道路は、本来右折してはいけない直進の道だった」としておきましょう。

この場合、事故が起きたのはAさんのせいですよね。右折できない道で右折し、しかも右折より優先させるべき直進車Bさんの進路を妨害していますから、普通に運転していたBさんより過失が大きいのは明らかです。

お互いの過失をまとめると、「事故が起きたのはAさんが80%悪いからで、同時にBさんだって良くみていれば右折車とぶつかるまえに危険を予測できたかもしれないのだから、20%の過失がある」といった結果になるわけです。

さあ、ここでお互いの損害賠償請求額に過失相殺の考えを取り入れると、どうなるでしょうか?

損害賠償請求では、「自分の過失のぶんだけ責任を取る」ことになります。

なのでこの場合、AさんはBさんが請求する100万円のうち80万円を支払うことになり、Bさんは被害者でも過失が20%あるので、Aさんが請求してきた100万円のうち20万円を支払うことになります。

例では金額が100万円だったのでたいしたことのないように感じるかもしれませんが、死亡事故の場合、損害賠償請求はもろもろ含めると1億円を軽く越えることも少なくありません。

過失相殺、過失割合について考えていないと、「相手のせいで家族が死んだ! 被害額は1億円なので損害賠償を請求する!」と裁判をしても、「いやいや、故人の過失が大きいのだから、請求は4000万円しか認められないよ」なんてことになってしまうのです。

死亡事故では、過失割合の扱いが難しい

死亡事故は、通常のけがを伴う交通事故、いわゆる人身事故に比べて損害賠償の金額がずば抜けて大きくなります。

だからこそ、たった数%でも故人の過失割合があると認められると、実際にもらえる損害賠償額は大きく減ってしまうのです。

そして困ったことに、死亡事故では故人が亡くなっていて意見を聞くことができないので、ある程度加害者の意見に過失割合が捜査されやすい、という事情があります。

相手に悪意がなくても、事故のショックから「相手が信号無視をしてきたんだ!」と思い込むなんてことも良くある話です。

遺族がいかに故人に過失のない事故だったかを客観的に証明できるかが、損害賠償請求の一つの大きな鍵になります。 

適切な損害賠償を勝ち取り、故人の名誉を守るための過失割合

本当は悪くないのに、故人に事故の過失、つまり責任が被せられると、遺族が行う損害賠償請求の金額が下がるだけでなく、加害者が受ける刑事罰も軽くなります。

強いい方をすれば、「亡くなった人は自業自得なのだから、あまりとやかくいうのではない」とされてしまうのです。

不当な過失割合を押し付けられてしまうと、お金だけでなく故人の名誉も傷つけることになってしまいます。

損害賠償請求のためにも、故人の名誉のためにも、遺族は「事故が起きた本当の原因」を考え、証拠を集めて戦っていかなければならないのです。