被害者は、加害者の刑罰に働きかけることができるの?

どんな形であれ、いきなり家族や大切な人を奪っていく死亡事故はいたましいものですし、加害者にはしかるべき罰があるべきです。

ですが、日本では被害者が加害者に直接報復をすることは認められていません。

「家族が事故で亡くなったから」と遺族が相手を包丁で刺したら、刺したほうが殺人罪に問われてしまうのです。

ただ、遺族が「できるだけ重い刑罰を与えてほしい!」と思っているなら、できることはあります。

加害者の刑を重くしたい。そんなときに遺族ができることを紹介していきます。

死亡事故で課せられる刑罰の重さ

相手の刑を重くするまえに、「死亡事故を起こした人にはどれくらいの刑が課せられるのか」を知っておきましょう。

死亡事故は、どんな内容、原因の事故だったのかによって罰の名前が変わります。

一番多いのは、「過失運転致死傷罪」です。

「わざとではないけど、不注意や過失があったから相手を死亡させてしまった」場合の罪ですね。

そして、死亡事故において最も重い刑罰がくだされる罪の名前は、「危険運転致死傷罪」です。

「信号無視をしたり、お酒を飲んで運転したり、明らかに危険な運転をして相手を死亡させてしまった」ことに対する罪です。

過失運転致死傷罪の場合、刑罰は「7年以下の懲役、または100万円以下の罰金」です。

危険運転致死傷罪の場合、「20年以下の懲役」です。

そうなんです、お気づきの方もいると思いますが、死亡事故の場合、死刑判決がないのです。

「相手を殺すために車でひいた」なら殺人罪に問えますし、殺人罪なら無期懲役や死刑もありますが、多くの事故はちょっとした不注意から起こるため、厳罰といっても懲役や罰金で済むのです。

加害者が無免許であったり、その他の罪があると刑は重くなりますが、それでも長くなって懲役30年です。

実際には死亡事故では執行猶予がつきやすく、厳罰とはいえない刑で終わってしまうケースも少なくありません。

加害者の厳罰を望むためにできること

「加害者が殺意をもって起こした事故だ」という証拠が出せれば話は別ですが、加害者の厳罰を望むということは、「加害者が問われている罪名の刑罰の範囲で、できるだけ重い処分を望む」という意味になります。

例えば、過失運転致死傷剤なら「7年以下の懲役、または100万円以下の罰金」なので、罰金刑を懲役に、懲役2年を懲役7年に変えるために動くということです。

警察の事情聴取で意見を訴える

事故が起きると、警察は現場検証をして実況見分書などをつくりつつ、加害者や目撃者、そして遺族にも話を聞きます。

事故のことについて警察から呼び出しを受けたとき、たいていの場合警察の人から「加害者を厳しく罰してほしいか」を聞かれます。

犯罪の刑罰については被害者感情も決して無視できない要素なので、「厳罰を望みます」と伝えれば、刑が重くなる可能性が高くなります。

検察官に会いにいって、意見する

警察の人に厳罰を望むかどうかを伝える、というのはものすごく大きな効果のある方法ではありません。

どうしてかというと、「加害者を起訴するか(裁判をするか)決めるのは検察で、刑事裁判で加害者の罪を追求するのも検察の人だから」です。

というわけで、相手に厳罰を望むなら検察の人に自ら連絡を取りましょう。

とくに、事故の加害者が葬儀にも来なかった、謝罪のことばもない、反省しておらず、ふてくされたような態度だった、という場合は有効です。

口頭ではきちんと伝わらないこともあるので、書面や動画、音声データなどで相手の悪意や過失を客観的に指摘できるように資料をまとめておくとなお良しですね。

裁判に参加して、裁判官に意見する

裁判がはじまるまえに検察の人に頼んでいると、「被害者参加制度」を利用して被害者遺族は裁判に参加できます。

刑事裁判では、加害者の罪を追求する検察と情状酌量の余地や一部無罪を求める相手側弁護人、加害者本人の意見を聞いて、裁判官が判決をくだします。

被害者参加制度で裁判に出て、加害者のことをどう思っているのか、死亡事故によっていかにつらく、苦しい思いをしているのか、相手の悪質さや許したくないという重い、厳罰を与えてほしいという希望を裁判官に伝えることで、判決が重い方向に傾く可能性があるのです。

加害者の刑が決まってから示談する

刑の重さは、加害者にどれくらい更正の余地があるか、反省しているか、そして被害者に許されているのかでも変わってきます。

示談の成立は「被害を受けたけど、賠償してくれたからもう良いよ」ということを意味しますから、刑事裁判の判決がくだるまえに示談をすると、「被害者遺族はもう加害者のことを許したんだな」と判断されて刑が軽くなってしまうのです。

厳罰を望むなら、示談交渉や民事裁判は加害者の刑が決まってから行うのがおすすめです。

法に許された範囲で、できるだけ厳しい刑を相手に望むのはごく自然な感情です。

後悔しないように、許せないという気持ちを行動に移しましょう。