刑事裁判が絶対に公平な結果で終わるとは、限らない!?

加害者の刑事罰を決める刑事裁判では、「証拠から加害者の過失を指摘する検察」「加害者本人」「加害者の刑を少しでも軽くしようとがんばる弁護士」が話しあいをします。

良く考えると、これって少し変だと思いませんか?

事故の被害にあった被害者や、被害者遺族の意見を述べる機会がないのです。

死亡事故は、「加害者天国」になりやすい

裁判では、加害者がいいたい放題に嘘をついて自分の罪を軽くすることも不可能ではありません。

検察が加害者の厳罰を求める厳しい追求をしないことで、加害者の過失を被害者に押し付けられてしまうこともありえます。

裁判にひょこっと出てきて、涙ながらに「こんな事件を起こしてしまったけど、こいつは本当に良い奴なんです!」「二度とこんな事件は起こさせません!」と情状証人に意見してもらい、裁判官が「情状酌量の余地があるので、刑罰は軽めに」なんて判決を出してしまう可能性だってあるのです。

加害者が悪質な人だった場合、遺族は相手に思うような刑罰を与えることができず、とても悔しい思いをしてしまいます。

そんな加害者を厳しく追求するために作られたのが、「被害者参加制度」です。

 被害者参加制度を利用すれば、遺族が刑事裁判に参加し、加害者の過失や悪質性を直接裁判官に訴えたり、証人尋問に参加したりすることができるようになります。

というわけで、今回は「被害者参加制度」をご紹介します。

「被害者参加人」ができる5つのこと

 被害者参加制度では、被害者(死亡事故の場合、遺族)は5つの行動が認められています。

一つずつ、どんなことができるのか確認してみましょう。

①刑事裁判の参加者になることができる

刑事裁判において遺族感情や意見が重要視されないのは、遺族が裁判の参加者ではないからです。

被害者参加制度を使えば、裁判の流れを聞くだけの「傍聴席」から飛び出して、刑事裁判の当事者になれるのです。

②検察の人に、聞いてほしいことを指定できる

被害者参加人は、検察官に「つぎの証人尋問でこれを聞いてほしい」といった要請をすることができます。

検察官はべつに従わなくても良いのですが、「どうして遺族の頼み通り質問しなかったか」を遺族に説明する義務があるので、意見がむげにされることはありません。

③加害者の情状証人に対して証人尋問できる

刑事事件の証人は、「事故の事実を証言する目撃者」と「加害者の情状酌量の余地を主張する情状証人」です。

このうち、情状証人のほうにのみ遺族が直接証人尋問をすることができます。

④加害者に直接質問できる

制度を利用すれば、加害者に対して事実確認などの質問を直接行うことができます。

なお、できるのは質問だけです。非難や追求に関しては、⑤の領分となります。

⑤判決の内容を考えてほしい、と裁判官に意見できる

被害者参加人は、遺族の立場から裁判官に意見陳述できます。

例えば、「裁判ではあんなふうに殊勝にふるまっているけど、この人は事故のあとこんなひどい暴言をいったんです! 絶対に反省なんてしていません! だから厳しく処分してください」といった意見がいえるわけです。

民事訴訟に備えて、刑事記録をコピーしよう

裁判では、さまざまな証拠や証言が提出され、提出された記録は裁判所に保管されます。

これを刑事記録というのですが、最初の裁判のあとに裁判所に申請すれば、遺族は刑事記録の閲覧やコピー(謄写)できるのです。

「意見陳述の内容をじっくり考えたい」「民事請求をするときに、相手の悪質性を証明できる証拠がほしい」といった理由があれば、民事の請求でも役立つ記録をコピーできます。

被害者参加制度の注意点

被害者遺族が加害者の罪を直接追求できる被害者参加制度ですが、注意点がいくつかあります。

最後にまとめて確認しましょう。

自ら申し出ないと権利は使えない

被害者参加制度は、公判(刑事裁判)がはじまるまえに検察の人に制度の利用を願い出ておかないと使えません。

申請しなければ、遺族は傍聴席までしか入れないのです。

検察の人ときちんと話しあわないと、満足の行く結果にならない

検察の人に質問をお願いするなど、制度の多くは検察官を通して行います。

検察官と意思の疎通や意見のすり合わせができていないと、思ったような追求や指摘ができないので、できるだけ早めに検察の人に連絡しておくのがおすすめです。

自分一人でするのはとても難しい

制度で認められていることは裁判のなかのごく一部です。

ですが、ごく一部であっても裁判の用語は難しく、加害者と関わるという精神的なストレスとも戦わなければなりません。

 被害者参加制度では、弁護士に一部、ないしすべてを委託することも認められていますので、無理せず弁護士に任せることも考えましょう。

事故の加害者と関わりをもってしまうぶん、被害者参加制度はつらいものです。

しかし、当事者の一人として直接裁判に介入することができる効果は、決して小さくありません。

被害者参加人をうまく使えば、悪質な相手の刑事責任を厳しく追求できるのです。