交通事故の加害者は、はたして通夜や葬儀にやってくるのか

死亡事故で、大切な家族を失ってしまう。

当然のことながら、遺族は現実を受け止める暇もなく、故人の通夜や葬儀に奔走することになります。

さて、遺族や親戚、故人と親しかった人、恩人、仕事関係の知り合いが集まる通夜や葬儀に、「交通事故加害者」は参列するのでしょうか。

答えは、「参列する人もいれば、参列しない人もいる」です。

死亡事故が起きたあと、加害者が故人の葬儀に参列するかどうかについては遺族側の意見、加害者側の意見がそれぞれあるのですが、今回は「どうして加害者は葬儀に参列する(もしくはしない)のか」を考えていきましょう。

加害者は、「遺族に対する誠意」か「自分のため」に参列する

加害者が「故人の葬儀に参列しない」理由は、簡単です。

いろいろありますが、例えば「自分のせいで人が亡くなった、という現実を直視したくない」「故人のことや遺族のことを知って後悔したくない」「針のむしろになること間違いなしの葬儀に参列して、責められたくない」などですね。

なかには「加害者の自分が顔を見せることで、遺族をますます傷つけてしまうのではないか」と考えるケースもありますが、それは置いておきましょう。

事実として、こない人は葬儀にきません。

では逆に、加害者が葬儀に参列するのは、どうしてなのでしょうか。

いまいった通り、加害者が故人の葬儀にやってきたら、当然お互い良い気持ちにはなりません。ののしられたり、追い返されたり、泣き崩れる遺族を見て心の底から後悔したりします。

それでも葬儀に参列する加害者がいる。その答えは、もちろん千差万別いろいろありますが、大まかに、

  • 遺族に対する誠意のため
  • 自分のため

のどちらかと考えて良いでしょう。

遺族に対する誠意を示すために参列するケース

交通事故に限った話ではありませんが、加害者が被害者に対してできることは、驚くほどありません。

亡くなっている人を生き返らせることができない以上、加害者ができるのは、「故人や遺族に謝罪する」ことや「しかるべき損害賠償を払う」くらいのものなのです。

そして、相手に申し訳ない、自分が責められて当然だ、葬儀に顔を出さないなど、そんな不誠実なことはできない、という理由で葬儀に参列する人もいます。

自分のために参列するケース

誠意として参列してくれる・・・残念なことに、多くの場合そうではない、と思っておいたほうが良いでしょう。

どうしてかというと、「葬儀に参列することで、加害者が取る責任が軽くなる」可能性があるからです。

死亡事故の場合、刑事、民事、行政という3種類の罰を受けます。

このうち、刑事責任を取る、つまり罰金を払ったり懲役刑に処されると、加害者はとても大変なことになりますよね。

懲役をもらえば当然仕事もできなくなりますし、出所しても仕事を探すのは難しくなります。

しかし、よほど悪質な運転(飲酒運転や過度のスピード違反)をしていない限り、交通事故は「故意に被害者を亡き者にした」わけではないことが多いので、「遺族と示談がすんでいる」「誠実に謝罪をしている」ことで執行猶予がつきやすいのです。

示談がすんでいる、つまり、「葬儀に参列する、真剣に謝罪するなどの姿を遺族に見せることで、遺族の感情をさかなでしないようにして、判決が出るまえに示談交渉をまとめて」しまえば、加害者の刑事罰はとても軽くなります。

遺族が混乱している早期に示談をまとめれば、相場よりずっと安い損害賠償金額で抑えられることも多く、悪知恵や保身、はたまた実際に保険金を支払う保険会社の人から「葬儀には参列しておきましょう」といわれて葬儀に参列する、なんてことも考えられます。

だからこそ、事故後の示談交渉は加害者や相手の保険会社から急かされることが多いのです。

遺族は加害者の参列を断っても良いの?

こういった事情や理由があって、加害者は葬儀に参列します。

しかし、それはすべて加害者の事情にすぎません。遺族は、加害者の参列を拒否しても良いのです。

ただ、本当に誠意ある相手に対してまで激しい対応をすると、あとあと示談や裁判がこじれてしまうこともあります。

断るか、受け入れるかは自分たちなりに判断しましょう。

あえて争いたくない、相手もつらいんだ、と葬儀への参列を許しても良いですし、相手が誠実に謝罪してくれることによって、遺族のなかで一つの区切りがつく、ということもありえます。

遺族が無理をする必要はない

他人の心のなかは誰にも見通すことができないわけですから、相手がどう考えているかは実際のところわかりません。

一番大切なのは、遺族の方は無理をする必要はない、ということです。

死亡事故による喪失や損失は、ことばにできないほど大きなもの。

加害者が葬儀に参列するかどうかという一事に関係なく、請求できる損害賠償請求をしっかり行い、今後の生活のためにがんばることも大事です。

加害者の参列を許すかどうかは、そのときの自分の気持ちに従えば良いのです。