加害者に請求する損害賠償請求・・・もらった香典は差し引くべき?

遺族は、死亡事故を起こした相手=加害者に対して、損害賠償請求をすることができます。

ただ、損害賠償は自由に請求できるわけではなく、実際には「逸失利益」「慰謝料」といった内訳があって、それぞれの項目で計算方法やどうして請求できるのかがきちんと決まっています。

故人の葬儀をあげるためにかかったお金の請求は「葬儀費用」という名目です。

もう少し細かいことをいうと、「死亡事故によって葬儀をあげる必要が生まれてしまったから、かかった費用の補填をしてくれ」という理由で加害者や相手の保険会社に葬儀費用を請求するわけです。

「あれ? そうはいっても、葬儀をあげたときたくさん香典をもらったじゃないか。香典のぶん葬儀にかかったお金の負担は軽くなっているんだから、相手に請求する葬儀費用から、香典は差し引きするべきなんじゃないの?」

と気になったあなた、お金に対してじつにシビアな考えをおもちですね。

「加害者に行う損害賠償請求」は、「被害者や被害者遺族が受けた損失をお金という形で取り戻すため」に行うものですから、「負担額が小さくなればそのぶんを減らして請求する」のはたしかに一理ある意見です。

しかし、香典については「請求する葬儀費用から、いただいた香典の金額を差し引きする必要は一切ありません」

今回は、どうして香典は差し引きしなくて良いのかを説明していきます。

そもそも、香典とは

そもそもの話、「香典」とは一体どういうものなのか考えたことはありますか?

日本には日本の文化がありますよね。昔から続く慣習、文化に従って、普段はなんとなく「そういうものだから」と払ったりもらったりしているものはたくさんあります。

例えば、最近は減っていますが、引っ越しをしたときは向こう三軒両隣に引越しそばを配ります。

ご近所さんにそばを配るなんて、意味がないようにみえて、

  • そばが安価で手に入れやすかった
  • そばの麺に「長いお付き合いを」という意味をこめられる
  • 近所の人に自分がなにものかを顔見せするのに、おすそわけはうってつけ
  • 引越しそばを配れば「これからよろしく。お互い助けあっていきましょう」という挨拶が一度でできる

など、いくつもの意味や目的を果たすことのできるとても便利なやりとりだったわけです。

昔からある慣習とは「こうしておいたほうが良い」という知恵の結集なのですね。

そして香典は、「お金のかかる葬儀を自分たちで負担するのは大変だから、少し助けてあげよう」といった厚意から弔問客が遺族に渡してくれるお金です。

ご近所付き合いが多い日本では、なにかある度にお互い助けあうことで、いろいろな負担を軽くしてきました。

そのため、香典から葬儀費用を出すのが一般的になっているわけです。

しかし、香典や香典返しは、葬儀費用とは関係ありません。どうしてかというと、「香典は喪主の個人財産だから」です。

「香典」は喪主が個人的に受け取るもの

香典をもらうのは喪主です。

香典の目的が葬儀費用の負担軽減にある以上、葬儀を取り仕切り、葬儀費用を支払う立場である喪主がもらうのが自然ですよね。

遺族や親戚でわけあって、それぞれ勝手にお金を使ってしまっては意味がありません。

そしてここが重要なのですが、「香典があれば葬儀費用の負担はたしかに軽くなるものの、香典があってもなくても葬儀費用にかかる金額は変わらない」のです。

香典は喪主の個人財産ですから、香典から葬儀のお金を出したとしても「喪主が、他人の厚意で少しぶ厚くなった自分の財布から葬儀費用を払っただけ」のこと。

「葬儀にかかる費用そのものが安くなるわけではない」ので、損害賠償請求では「香典のぶんを考えずに、かかった葬儀費用を請求して良い」のです。

ですから、例えば「葬儀費用が100万円かかって、香典は合計で40万円いただいている」ときは、葬儀費用は100万円請求できます。

「香典返し」はどうなるの?

ついでに、香典返しについても触れておきましょう。

香典をいただいた方には、香典返しをしますよね。

香典返しは、いただいた香典の範囲内で出費するものです。喪主が個人的に香典というお金をもらって、これまた個人的にもらったお金からお返しをしているだけなので、葬儀費用とは関係がない、ということになります。

ちなみに、かかった葬儀費用は相続税の計算をするときに控除し、相続税を安くすることができますが、香典や香典返しはここでも無関係です。

「葬儀に100万円かかって、香典を40万円いただいて、香典返しで20万円お返しした」場合、「控除できる金額は、本来の葬儀費用である100万円」です。香典返しを費用として120万円控除することはできません。

とはいえ、香典が控除や税金に関係ないというのは、あくまでも一般的な金額の話です。

場合によって結果は変わってしまうので、気をつけましょう。